篠山の方言アラカルトー「あたきたない」と「おおとろし」
日々あたたかくなるにつれて、町のあちらこちらで冬眠から覚めたように子どもたちが遊び始めます。そんな風景の中ご近所のおばあさんの「あたきたない」や「おおとろし」が頻繁に聞こえはじめる時期でもあります。
田植え前のたんぼで泥だらけになってサッカーや野球をしたり、溝というよりどぶの中を歩き回ったりした後は必ず「あたきたないことして・・」と叱られ、また桜の木に上がったり、橋の欄干にぶら下がったりすれば通りすがりのおばさんから「おおとろし」の声が洩れるのです。
「あたきたない」はとてもとても汚く、「おおとろし」はとてもとても危険で怖いのです。
「あたきたない」の「あた」は強調の言葉のひとつで「きたない」と「こわい」の前にのみ付きます。
一方、「おおとろし」は「おお、おそろしい」が変化したと思われる言葉で「怖い」「危ない」という意味に使われます。ただ、この「おおとろし」は「ああ、びっくりした・・」というようにため息混じりの独り言に大半使われます。
商店街の狭い道で妙に意気がってバイクや自動車を猛スピードで駆け抜ける若者を見て、大人たちはこう言います。「おおとろし、あたこわいことして・・」
ところで「おおとろし」は地域によって微妙にそのしゃべり方が変化しているようです。それは「おっとろし」「おとろし」になっているのですが、基本は「と」と「ろ」の間で巻き舌を使って「と」をやたらと強調することです。
篠山もすばらしい新庁舎がその姿を現し、田園交響ホールと共に観光にみえる方々の絶好の写真の構図になるはずです。しかし大切なのは容姿より中身です。「おおとろし。あたもったいないことして」という声を聞く事のない町になってほしいものです。