篠山城跡のすぐ南徒歩約3分篠山城には「馬出」が北(大手)、東、南の三ヶ所にあって、北を除いて残存している。
城門から外堀を渡るのは、普通の道路の感じだが、堀の水位を調節する役目とともに、敵に破壊されないようにと基礎から積み上げた「土橋」なのである。その前方に設けられ、堀に囲まれ石垣や土塁の上に塀をめぐらした比較的小さな区画(曲輪)が馬出で、この城は3つとも角馬出であった。
馬出は城門のさらに外を守る施設で、場内への出入りを複雑にするため、必ずこの入口で確認をうけてから、土橋を経て城門に向う仕組みになっているわけで、最初と最後のチェックポイントなのである。戦いが始まると、武将が敵状偵察をしたり、兵馬をここに集合させて、出撃する拠点にするのである。
「南の馬出」は一番規模が大きく、搦手(裏門)の防衛を重視したと思われる。幅約30メートルの堀に囲まれ、高さ約4メートルの土塁が残存し、水面下まで石垣を用いずに築かれた「土塁の馬出」であって、わが国で現存する唯一の貴重な遺構である。なお、ここの堀を薬研堀と呼ぶのは誤りである。
「南馬出の桜の巨姿」(玉置金司筆の水彩画)は安藤直紀撮影の写真をもとにしたもの(慶応年間か明治初年頃)
「丹波篠山五十三次ガイド(改定版)」(平成7年8月発行)より
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