重兵衛茶屋バス停から徒歩約5分重兵衛茶屋の東方約300メートルの左側山麓に「春日神社」があり、その境内に「高城市松稲荷神社」が祭られている。もとは、八上上村の長亀山石心寺の裏に祠があったのをここに移したものという。
文政年間のこと、領内の八つの稲荷神社名を名乗る力士たちが、「頭取・高城市松」に引き連れられ、江戸両国・回向院広場の上覧大相撲で連戦連勝して、時の老中で、負け嫌いの篠山藩主青山忠裕公が大変喜んだという説話が伝えられている。
「いなり」は「稲生り」であって、倉稲魂神(宇迦御魂神)(うかのみたまのかみ)という農業神を主祭神とし、狐をその使とする田の神に対する信仰である。したがって、五穀豊穣・商売繁盛を祈願するのが普通であるが、ここのお稲荷さんは、化身となって大活躍されたことにあやかろうと、勝利守護・合格成就の神としても崇敬されている。
なお、春日神社は、もと渋谷家の地神として屋敷内にあり、5代目修理允久親が建てたという。境内の南北の広大な地域を「主膳屋敷」と呼んでいるが、慶長7年~13年(1602~08)の八上城主前田主膳正茂勝の館があったところである。
「丹波篠山五十三次ガイド(改定版)」(平成7年8月発行)より
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