大渕バス停から徒歩約5分集落の西側の小丘上に「福聚山長徳寺」があり、太寧寺末で、ご本尊は、釈迦牟尼如来坐像である。
寺伝などによると、もとは般若寺の北山あたりにあって、「大通庵」と称していた。元亀・天正(1570~91)のころに創建されたが、大破していたのを文禄元年(1592)、再建したとされる。
当初は、波多野氏やその関係者によって保護奨励されたキリスト教寺院であったが、キリスト教禁制により廃滅し、この地に移されて曹洞宗に改め、寺名も変えたのだろう。そのなかで、キリスト教信仰は続けたのである。
ここの観音堂には、キリシタン弾圧後は「子安観音」とか「子育て観音」と言ってきた「塑造マリア観音立像」(町・文)が安置されており、内厨子に明和4年(1767)2月吉日とある。
子どもがほしい人は、お参りして土の人形を借りて帰り、子宝を授かり安産であると、願いがかなえられたお礼に、もう一つ人形を添えてお参りしたという。
表向きは、安産信仰の対象とされているが、郷土のキリシタン史を探る重要な資料である。
「丹波篠山五十三次ガイド(改定版)」(平成7年8月発行)より
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