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熊按神社(春日江)

泉妙霊口バス停から徒歩約10分

 泉から春日江への道を北上すると、山麓に突き当たる右側に、老木に囲まれてあるのが、全国唯一の名をもつ「熊按神社」である。『延喜式』の神命帳に記載されている古社であるから、1050年も前にはすでに祭られていたことになるが、由緒や古記録によっても、その創建年月日は不詳である。
 ご祭神は、皇大神・応神天皇・雨児屋根命・上筒男之命・熊野久須毘命(夫須美命?)ほかで、神社調書には主祭神の皇大神を熊按大神とし、天照大神のことであると記している。
 さて、春日江村は古くは田半滝(多波滝)村といい(『丹波志』)、多波とは山間の平坦地を意味するようである。ところが、正慶2年(1333)3月に奈良より春日明神を勧請のうえ氏神とし、村名を春日江と改めたと伝えられる。
 すでに、この地には熊野神が祭られていたのであるが、そこへ春日神が合祀されたのではなかろうか。そしていつのほどにか、熊野の「野」の草書体が書き間違われたのかも知れない。江戸時代の『篠山封彊志』や『丹波志』などには、二之坪村の熊野新宮神社との間に混乱がみられる。しかし、明治3年、篠山藩庁の調査によって、享保年間(1716~36)に村役が氏神は古代からの「クマアン社」にしたいと届け出ていることがわかった。
 また、『特選神名牒』と『神祇志料』にはそれぞれ鎮座地は春日江村としているし、昭和12年の『兵庫県神社誌』には熊按神社の鎮座地は、古来からこの地であることを明快に結論づけている。
 文亀年間(1501~04)に本殿を再建し、享保年間と慶応元年(1865)に改築。現在の社殿は大正12年2月に建設された。
 例祭は、毎年、10月12、13日である。
 なお、別当寺の廃三岳山円満寺・般若院にあったという貴重な鉄眼版を含む600巻の大般若経は、「極楽山観福寺」に保存されている。公民館の傍らに「熊按神社旧跡」の碑が建っている。

(注)鉄眼版―江戸前期の黄檗宗の高僧鉄眼が明の万歴版に訓点を加えて、寛文から10余年間に作成した大蔵経(仏教聖典の総称)。黄檗版。

「丹波篠山五十三次ガイド(改定版)」(平成7年8月発行)より
※地名・交通経路等は書籍発行時のもので、現在の状況とは異なる場合がありますのでご注意ください。