バスの便はなし車だと国道173号線を北上し、藤坂の三差路を左折して、県道本郷藤坂線を約3キロメートル走ると、左側に大桂の案内板や道標が立っている。
篠山城跡から車で約25分、道標からやく200メートルばかりは車が入れるので、徒歩約15分で現場まで行ける。
県道に車をとめて南方の山腹を眺めると、杉の植林に囲まれ、そこだけ別の樹木の群生のように見えるのが、県下一の巨木として、県の天然記念物に指定されている「桂の大木」である。
やや急な坂を登って近づくと、それは無数の木々の集合体ではないかとさえ思える。幹回り約12.6メートル、高さ約30メートルもある一本の木であるが、根元の周囲から多くの成木が立ち上っており、幹は7~8メートル上で10数本に分かれているし、枝はねじれ、からみ合いながら大空を指しており、生きる力の強さと、畏敬の気持を抱かされる。
毎年、5月10日、藤坂の「春日神社」のお田植え式には、この大桂の生命力にあやかろうと、この枝を24本切り取って、棚田にみたてた神社の舞台に植えて豊作を祈るのである。
「丹波篠山五十三次ガイド(改定版)」(平成7年8月発行)より
※地名・交通経路等は書籍発行時のもので、現在の状況とは異なる場合がありますのでご注意ください。