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黒豆のお話
日本一の評価「丹波黒」
丹波篠山の特産として知られる黒大豆の畑=川北で
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丹波篠山の黒大豆は、篠山盆地特有の気候と粘土質の多い土壌に恵まれた特産物である。ふっくらとして黒く輝く色つやと、皮がむけずに煮上がるのが特徴で、格別な風味があり、「日本一」と評価が高い。
西紀地区川北の「川北黒」、城東地区の「波部黒」が特に有名であったが、今は「丹波黒」の名で統一され、さらに品種改良も進められている。
川北の黒大豆にはつぎのような説話がある。
昔、川北には大変情け深い大名主がいた。春の訪れも近いある日のこと、病気になって苦しんでいる旅の僧を助け、家で養生させていた。その年はどうしたことか、田植えの時期になっても一滴の雨も降らない。雨乞いの祈願を続けたが、田はひび割れ、村人たちは困り果てた。
相談した結果、「よそ者がこの村に入り込むと不幸があるというが、あの坊主がいるからじゃ。早く追いださんとあかん」ということになった。
村人たちは名主の所へ押し掛けて、押し問答のうえ乱暴を始めた。坊さんはたまりかねて「名主を攻めないでください。お陰様で病気も治りました。何か感謝の気持ちを残したい」と言う。
村人の一人が「では、この豆の芽を出さしてみろ」と、白大豆を黒く煎ったものを突き出した。坊さんは、三七(さんしち)、21日の願を懸けて白く干上がった田を耕し、お経を唱えながら、煎り豆を一粒一粒蒔いて旅立った。
やがて、豆は青い芽を出し、立派に成長した。秋には何と不思議なことに、つやつやとした大きく見事な黒大豆がたくさん取れたという。
篠山藩主は毎年、特選の「丹波の黒大豆」を将軍に献上して、面目を施したが、今、黒豆の枝豆で飲むビールの絶妙の味はそれぞれご存じのないことである。 |
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