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狐の恩返し
寺の建て替えを手助け
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昔、泉村の八幡さんの境内に竜泉寺というお寺があった。
寺の裏側には、古くから尾の先が白い一匹の狐が住んでいた。
別に悪いこともしないので、村の人たちはお参りするたびに、油揚げや小豆ご飯を施すことにしていた。
ある年、そのお寺が焼けて、建て直しをどうしたものかと困っていた時のこと。
ちょうどそのころ、小枕村では、お寺を立て替えて、たくさんの古い材木の置き場に困っていた。
ある日、泉村の又左衛門という人が小枕村にやって来て、「お寺が焼けて困っています。どうかこの古材木を売って下さい」と申し出た。
小枕村では処分に困っている時だったので、早速話がまとまり、又左衛門はその場で銀二匁を支払って急いで帰っていった。
ところが、10日たっても一カ月たっても材木を取りに来ないので、小枕村では催促の遣いを泉村にやった。
驚いたのは泉村の方。それもそのはずで、だれ一人材木を買いに行ったものはない。
しかし、もう代金が支払ってあるというので、相談のうえ、村人が総出で小枕村の古材木を運んで帰り、不思議なことだと思いながらお寺を建てた。
それが昭和7(1932)年に改築するまでの建物である。
そして、だれ言うともなくあれは狐の御恩返しに違いないと、今も村人の間で信じられている。
なお、このほか狐にまつわる話として、郡内には峠の狐(旧城東町)、三つ池の狐(同)などが残っている。 |
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