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ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典 |
■ 与惣九郎の見た大蛇むかし、丹波の古佐の与惣九郎という人が、信濃の国の諏訪神社へお参りして、その分霊(建御名方命の妹) といただき帰ってきました。今の渡瀬橋のあたりまで来たときのことです。それまでずっと後ろについて来た一人の女の子が急に立ち止まったかと思うと、身を踊らせて下の篠山川へ飛び込みました。 驚いた与惣九郎の目には、もう女の子の姿はなく、見るも恐ろしい大蛇となって、 「わしは、諏訪神社の神霊じゃ。あそこに見える山は、七尾七谷と見受ける。眺めも良いので、わしはいついつまでも、あの山に鎮まりたい。」声とともに姿は消えてしまいました。 与惣九郎は、さっそくお告げのとおり、岡屋の富の山を開き、清めてそこにいただいて来た分霊をおまつりしました。 その時です。天地がにわかにゆれ動き激しい雷雨がとどろくと共に、大きな蛇体が富の山の七尾七谷をとりまき、雲つくような桧の根っこの穴から、大蛇の頭半分が出ている姿が見えました。 「わしは、子どもが好きじゃ。安産させよう。」 と、いう、おごそかな声が聞こえたので、与惣九郎は、はっとわれにかえると、空はすっかり晴れわたり、なんともいえぬ神々しさが、山いっぱいにみちみちていました。 それから、誰いうとなく、諏訪さんのご神体は蛇体であるといわれ、そのために諏訪神社は長い間(1903年まで)社殿を作らず、桧の古株にしめなわをかけて、これをご神体としておがんでいました。 |