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ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典 |
■ ものを言った大魚当野の山の上には、いつの時代に造られたか分かりませんが、「新池」「村池」など六つほどの池があります。この池の水をぬくと、山上から滝が落ちるように、とても美しいとのことです。 一方、当野の里には、今も「榧の木」「桃の木」と呼ばれる家があります。 この家と山頂にある池にからんでこんな話が伝わっています。 昔々のこと、それぞれの池には、「主」といわれる生き物が住んでいました。 ある時、魚採りの大好きな若者がこの池の「主」と呼ばれる大魚を捕らえました。若者は満足して思わず、 「とうとう、やった。早く帰ってみそ汁にして食べよう。何人分くらいつくれるやろうな。」 と、ひとりごとをいいながら、喜び勇んで帰る途中、友だちに出会いました。友だちは若者に 「どこへ行く?」 と、たずねました。若者が返事をする前に、大魚が 「当野の榧の木へみそ汁をすいに行く。」 と、言ったので若者の驚きは腰が抜けるほどで家に帰ってからも、二,三日起きあがれなかったと言われています。 この若者は、「榧の木」と呼ばれている家の若者であったということです。 |