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ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典 |
■ 追っ手の神と鐘が坂大むかし、鐘を盗んで逃げる神と、鐘を盗まれて取り返そうとする神がありました。鐘を取り返そうと追いかけた神が、村のはずれまで来たとき、日が暮れてしまいました。あたりがまっくらになったので、追いかけるのをやめ、その場に座り込んでしまいました。疲れたのかだんだん眠くなり、ぐっすりと眠ってしまいました。 ふと鶏の鳴き声におどろいて目をさますと、もうすっかり夜が明けていました。鐘を取り返そうと追っていた神は、追うことをやめ、久保谷に長くとどまることにしました。その地が今の追手神社であるといわれています。 一方、鐘を盗んで逃げた神は、山を越え坂を下って逃げました。逃げきったところがちょうど坂の途中で日がすっかりくれましたので、ここで休もうと鐘をそばに置いてぐっすり眠りにつきました。 やがて、東の山の上に大きな月が出ました。 「あっ、大きな月が出た。」 と、いって東の空を見上げた時、椎の木の実が一つ落ちて来て、神の目にあたりました。痛くて目を開けることができません。神はしかたなく、この坂に鐘を置いたまま逃げました。そこが「鐘が坂」と言われるようになったということです。鐘を置いて逃げた神は、氷上郡の小倉に下り、「鐘の宮」になられましたが今は、「刈野神社」と呼ばれて、お祀りされています。 |