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ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典 |
■ 桑原有名な歌人、和泉式部が丹後へ向かう途中、大変な嵐と大雨にあい、川は大はんらん、橋という橋はみんな流れてしまいました。昔のことですから、すぐ橋を架けるわけにはいきません。一つの橋をかけるのに、二年も三年もかかりました。ここまで来た式部は、行くことも帰ることもできません。大変困った式部は思案に暮れて、村の人々に相談しました。親切な村の人たちは、 「橋ができるまで、どうかゆっくりして下さい。」 と、言って家まで用意しました。式部は、村の人々の親切なもてなしに心から感謝しながら楽しい毎日を送っていました。 日がたつにつれて、式部もだんだん村のようすがわかってきました。そして、村を豊かにすることを色々考えるようになりました。 ある日、式部は村の人々を集め、蚕を飼うことをすすめました。村の人々は、式部の言うとおり蚕を飼うことを決めました。 山を開こんして、桑の木を植えることにしました。毎日、村の人々は一生懸命に励んだので意外に早く桑の木を植えることができました。 三年ほどたつと山のふもとは、一面の桑畑になりどの家も蚕を飼うようになりました。村の人々は式部に心から感謝しながら養蚕に励んでいました。 やがて、橋もできたので、式部は丹後へ旅たつことになりました。 「桑原の里に引くまゆひろい置きて君が八千代の絹糸にせん」 という歌を残して去っていきました。それから誰いうとなく、このあたりを桑原というようになったそうです。 |