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ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典 |
■ 瀬戸地蔵奈良時代の有名な僧、行基が清水寺にいたころのことです。ある日、都の方へ行こうとして、清水寺のふもと今田の木津へおりてきて、芦原まで来たときでした。 数人の村人たちが黒石川の川岸に立って、お経を唱えていました。 そこは、氷上郡の方から大阪の方へ行くのに、氷上郡谷川から今田町黒石に出て、本荘、市原、木津へと旅人が必ず通る近道であり、高い絶壁が川岸にせまり、下は深い渕になっているところでした。 行基は何ごとかと近づき、村人にたずねました。 「絶壁の斜面を通る旅人たちが、たびたびふみはずして死ぬんです。」 「この間は、川上から死んだ赤ん坊が、菰に包まれ、投げ捨てられたものが、この深い渕へ流れついたんですよ。」 などと話してくれました。そして、 「先日、亡くなった人のために弔っているんです。」 行基は、 「危険なところだ。どうか、こんな悲しいことのないように。」 と、その後、絶壁の岩面にお地蔵さんを彫りこんで、交通安全と、ここで死んだ人や子どものための供養にと、お祭りしたのだということです。 今も、瀬戸の地蔵として、お祭りが続けられています。 |