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ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典 |
■ 木津の狸むかし、今田町木津の小高い山の中に真蔵寺という小さいお寺がありました。山の中ですから狸がたくさん住んでいました。ある夏の暑い日、真蔵寺のお坊さんが涼しい部屋で昼寝をしていました。そこへ、一匹のいたずら狸が出てきて、お坊さんの頭を両手で持ち上げ、 「ヨーイ、トタン。ヨーイ、トタン。」と持ち上げては落し、持ち上げては落したからたまりません。目を覚ましたお坊さんは、 「こらー。いたずら狸め。」と、逃げる狸を追いかけましたが、狸は山の中に隠れてしまいました。 二、三日して、またお坊さんが昼寝をしていると、 さっきの狸がやってきて、 「ヨーイ、トタン。ヨーイ、トタン。」 「くそー。狸めー。」 お坊さんは、棒で狸の頭をガーンとたたきました。狸は怒って 「わしは、頭を持ち上げて『ヨーイ、トタン。ヨーイ、トタン。』しただけやのに、棒でたたくなんて、せっしょうな。うらむぞ、うらむぞ。」と、いいながら死んでしまいました。 お坊さんは、村人と狸汁をして食べました。 そのとき、殺された狸のおばあさんがやってきて、寺の戸のすき間からのぞき見て、 「うまいか、うまいか。ようこらえん、ようこらえん。うらむぞ、うらむぞ。」と、いって、それから村の田畑を荒らしまわりました。お坊さんは、 「これは、わしが悪かった。」と、後悔し、殺した狸をねんごろにとむらいました。それからは、狸が田畑を荒らさなくなったということです。 |