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丹波篠山ロゴ篠山の民話集

ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典


■ 丹波の人取り川

丹波の人取り川 むかし、篠山川には橋もなく、少し長雨が続いて水が出ると、流されたり、溺死する人が不思議に多いので「丹波の人取り川」といって、旅人や土地の人々が恐れていました。
 中でも、大山の一の瀬や岡屋の渡り瀬を越す旅人は、ここを非常に恐れ、無事に渡ったときは、必ず国許へそのことを知らすほどでした。
 「この川には、きっと主神が住んでいるにちがいない」と思った氷上郡のある商人が何とかこの難を救おうと、大願を起こし、生駒山の歓喜天を信仰して一心にお祈りをしていましたら、十年目のある夜、夢に一匹の大蛇が現れていいました。
 「わしは、篠山川に住んでいる主神である。おまえの信心の功徳によって、心を改め、今から天上して自天竜となろう。別れにのぞんで身の上を話そう。わしは、はじめ畑の三岳に棲んでいたが、そこに役行者がまつられたので、のがれて、藤岡の東窟寺の岩屋へ移ったところが、またもや、十一面観世音がまつられたので、仕方なく次は八幡渕に棲み、東古佐の戎が渕、川北の孫兵衛が渕から、野間の弁天が渕などを住みかと定め、悪神となって、多くの人身御供を取ってきたが、今からは瀬織津比売となり、水難者が一人も出ないようにしよう。雨乞いの願いもきこう。これから、十年間にこれらの渕が埋没するであろう。」と言って姿を消しました。
 不思議にも五年目に一番深かった八幡渕が河原となりました。また、水死者もでなくなり、雨乞いの祈祷をすると、大雨が降ったと言います。今も一の瀬や渡り瀬には「川越安全」としるした石碑が残っています。