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ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典 |
■ 天に昇った竜むかし、坂本の福徳貴寺に、大変立派なお坊さんが住んでおられました。ある日のこと、栗柄の滝の宮に参り、お経をあげておられると一人の少女がどこからともなく、あらわれ、 「わたしは、このあたりに住んでいるものでございます。今、お経の声を聞きここへ参りました。どうか、ありがたいありがたいお経を聞かせてください。」 と、頭を地につけてたのみました。 お坊さんは、はじめは不思議に思われましたが、この少女はきっと、何かの化け物だろうと思われ、言うとおりに 「それでは、一番ありがたいお経をあげましょう。」 すると、まもなく思ったとおり少女の姿がぱっと消えたとたんに、あたりがまっくらやみになりました。 しばらくして、滝の方を見つめると、それはそれは、みごとな一匹の竜が、すうっとあらわれ、 「わたしは、この滝にすむ竜女です。今のありがたいお経の力で天に昇ることができます。」 といって、三枚のうろこを残してきらきら光りながら、天に昇って行きました。 |