ホーム > 地域情報データベース > 篠山の民話集 > 古坂峠のきつね |
ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典 |
■ 古坂峠のきつね後川の人がぎおん祭によばれての帰り、おみやげのご馳走の包みを二人で棒に通して真夜中に近いころ、古坂峠にさしかかりました。向こうから一人の女の人が近づいてきました。誰かと思ってよく見ると、自分の妻です。「今ごろ どこへ行くのか。」 「まり帰りがおそいのでお前さんの迎えに来たんだよ。そのご馳走は私が持ちましょう。」 と、言って包みを取ろうとしました。 こんな真夜中に女一人で峠道を・・・おかしいぞと思ったつれの男はご馳走を取ろうとしたとき、女の目がキラッと光って、鼻がピクピク動いたのを見て、何かが化けているなと思い、とっさに持っていた杖で女の横っ腹をバシッとなぐりました。女はキャンと鳴いて姿を消してしまいました。 「何をするんじゃ。あれはうちのよめさんやぞ。」 「いや。あれは人間じゃない。ばけもんや。」 と、言い合いながら大急ぎで家に帰ってきました。 「おーい。今帰ってきたぞー。」 家では、寝ていた妻が、とび起きていいました。 「ああ、よかった。夢でよかった。今、お前さんに棒で横っ腹をなぐられたと思ったら目が覚めたよ。」 と、いって、大きなあくびをしました。 「さては、やっぱり・・・。」 と、夜が明けてから峠まで行ってみますと、一匹の大きなきつねが脇腹をなぐられて死んでいました。 |