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丹波篠山ロゴ篠山の民話集

ささやまのみんわしゅう 文・画 田中貞典


■ おに坂

おに坂県守と垂水との境に「おに坂」というさびしい峠があります。むかしは民家も少なく、山林や荒野の多いこの辺りには、山賊やおいはぎが住みつき、人々を悩ませていました。
 「へへへ・・・。ここなら大声を出されても近くに家一軒も ねえだ。まったくもっておあつらえむきだぜ。へへへ・・・。」
と、おいはぎはしめた!とばかり刀をぬいて身ごしらえをしました。
 「まてっ。おとなしくいうことをきかねえと命はないぞ。」
行商人は身ぐるみはぎ取られてしまいました。
 村の人々は、
 「あそこの峠には鬼がでるそうな。」
 「おそろしい峠じゃ。これじゃ野菜もまきも売りにも行け へん。」
 「うちじゃ病人のくすりも買いにいけへん。こまったことに なった。」
と、ひとびとは苦しみ、鬼が出る坂「おに坂」と呼ぶようになりました。
 むかしの道は、いまのようなみちではんく、もっと曲がりくねった峠でありました。人や荷車が行き来する数もふえて来るようになったので、弘化三(一八四六)年、もっと通りやすい、今のような道につくりなおされました。
 今は、山賊もおいはぎも出なくなりましたが、お嫁入りをするときなど、この道は絶対に今も通らないと言われています。