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甘辛しゃんのあらすじ

物語は1960年杜氏のふるさと丹波篠山から始まる

[丹波杜氏のページ] [ホームページ]

NHK1997年度後期連続テレビ小説に「甘辛しゃん」が始まりました。この物語は主人公の榊泉は篠山で生まれ育つという設定になっています。そして、篠山で多くのシーンをロケされています。
 1997年4月24日記者発表された「制作発表資料」をもとにその内容を紹介します。 


<あらすじ>

「農家育ちのシンデレラ」
     ~故郷の川、宮水となって灘に湧き出る!

○1960年(昭和35年)、杜氏の故郷、丹波篠山。泉は農村育ちの11歳―。


 冬は蔵人頭として働いてきた父なき後、女手一つで育ててくれた母とふたりぐらしの貧しい生活だが、美しい自然の中で、おおらかに育っていた。
 そして秋。記録的な被害をもたらした台風がこの地域を襲う。稲作に壊滅的な被害を被った母は、遂に家作と田畑を処分し、灘の酒造家に住み込みで働くことを決意した。母に従い、寂しさを振り切って丹波を後にする泉。二人が訪れたのは二百年の伝統を誇る格式としきたりの旧家だった。 旧家ゆえの伝統と秩序の中で、泉は持ち前の好奇心と明るさで新しい環境に馴染んでいく。そして一歳年下で、母親を病気で失っていた当主の息子とも打ち解けていく。
 そして驚くべき事態が泉を狼狽させる。母の健康的な暖かさと賢さに心惹かれた当主が母に再婚を乞うたのだった。当初、少女らしい複雑な思いでこの再婚話に反発した泉であったが、母がやっと幸せになれるのだと気づき、ようやく心からの祝福を送る。
 だが、貧農の生まれにもかかわらず、図らずも旧家の娘となってしまった泉のこれからは、決して平坦な者ではなかった―。


<ヒロインのプロフィール>


○ 榊  泉(さかき いずみ)……佐 藤 夕美子

 好奇心旺盛で笑顔の明るい少女は、杜氏の里・兵庫県篠山町の農家で生まれ育った。父の急死そして台風の甚大な被害から、母の決断に従い11歳の秋に故郷を後にする。新しい生活の場は酒造りの町・神戸市灘。古くから伝わる伝統の酒造家に母子は住み込んで働く。やがて酒造りの魅力にとり憑かれた泉は、数々の偏見や困難を乗り越え、自らが信じる新しい酒「純米吟醸酒」の醸造に情熱を燃やし、取り込んでいく。

○ 佐 藤 夕美子(さとう ゆみこ)

 1978年7月10日東京都生まれ18歳。現在、亜細亜大学経済学部1年在学中。87年にミュージカル「アニー」の子役・テッシー役でデビュー。テレビの連続ドラマは、ANB「八神君ちの家庭の事情」に次いで2度目。2年前より学業に専念するために活動を休止、再開するにあたって今回のNHK「連続テレビ小説」出演者オーディションに応募した。今まで学業中心に活動してきたため、とてもフレッシュな存在である。19歳から40歳代半ばまでを演じる予定。趣味 絵画・茶道・スノーボード。特技 剣道・タップダンス。(所属 マザーシップ)


<作者のプロフィール>


○ 宮村優子(みやむら ゆうこ)

 1958年、東京生まれ。早稲田大学 第二文学部文芸学科卒業後、雑誌フリーライター、企画製作会社勤務を経て、84年「25歳たち~危うい関係~」第11話で、シナリオライターとしてデビュー。
 NHKでは、連続テレビ小説「君の名は」(第2部 結婚編・第4部 志摩編)が初執筆。93年に「生きがいドラマシリーズ・銀の雫」、土曜ドラマ「おばさん咲いた」、94年に連続テレビ小説「ぴあの」、ドラマ新銀河「つばさ」、「赤ちゃんが来た」など、女性のしなやかな感性を生かした作品を次々と発表している。
 その他、「ハーフポテトな俺たち」「外科医・有森冴子」「君だけに愛を」(NTV)「子子家族は危機一髪!」(TBS)等を執筆している。


<タイトルの由来>


~甘辛しゃん~

 酒の味を表す甘辛は良く知られていますが、「しゃん」は?
灘の最高の酒をたたえる言葉として

”しゃんとあがった秋晴れの味”という表現があります。

蔵人だったヒロインの父もこの「しゃんとあがった味」が目標でした。
そして意味も分からず父の言葉として覚えていたヒロインも、やがてこの「しゃん」とした味の酒づくりを目指すこととなります。

甘辛しゃん。酒の味を表す言葉としてだけでなく、人生の機微を表す言葉ともいえます。また「しゃん」には、”素敵な女性”という意味もあります。
関西的な響きもあるこのタイトル、甘いも辛いもかみ分けた素敵な女性・ヒロインをこのドラマで描き、しゃんとあがったドラマを創りたいと思います。ご期待下さい。


<ドラマのポイント>


”母と娘”
 世代の違う二人の女性・それぞれの幸せ


 ヒロインの母は大正十四年生まれ。戦後の価値観の中で育った女性です。一方、ヒロインは昭和二十四年生まれ。戦後の新しい価値観の下で育った団塊の世代です。現代の年齢で言えば七十歳と、四十代半ばの二世代の女性です。この二人が伝統と格式の酒造家へ入り、それぞれの生き方を選びます。旧家の中で伝統を守りながら家族のために生きる母。新しい時代の要素を取り入れることによって初めて伝統は生き続けると考え、仕事に情熱を注ぐ娘。互いに異なったベクトルを描く”母と娘”が、そのぶつかり合いの中で母と娘の絆を浮き彫りにします。

姉と弟、そして弟の求愛
 ヒロインの母は、子連れで酒造家へ嫁ぎます。互いに子持ちの再婚です。全く生活の異なった二つの家族が結合し、摩擦エネルギーを放出しながら新しい家族を形成していきます。そして、血のつながらない弟からヒロインへの求愛。ヒロインはこの愛を拒みますが、後々結婚したヒロイン夫婦と弟の間では姉弟愛を超えた関係が続きます。

神戸
 震災から二年余りが過ぎた神戸。私たちはこの神戸を舞台に「元気が出るドラマ」を作りたいと考えました。灘の酒造家の皆さんも大きな被害を受け、木造の蔵はほとんど倒壊しました。しかし、そうした災害から力強く立ち直った皆さんに大きな感銘を受けました。取材でお聞きしたお話をドラマの最後のクライマックスにもってきたいと考えています。

戦後・ドラマの時代背景
 団塊の世代・戦後の自由教育のトップランナーであるヒロイン。何事にも興味を持ち、明るく積極的に取り組むヒロインは戦後の女性の象徴でもあります。この物語は、そんなヒロインのサクセスストーリーです。そして、ヒロインがとび込んだ酒造業界を通して戦後の食文化史も描きたいと考えています。前作「あぐり」は明治から1960年代までを描きますが、この作品では、1960年から現代まで描きます。二作で明治から現代までの女性史の完成です。


<作者のことば>


宮村 優子

 母親というのは、娘にとってなかなかやっかいな存在です。いじめられて帰ってきた時、ポンポンと背中を叩いて、好きなだけ涙を流させてくれた手。
ヘタクソなソナチネの演奏に、誰より真っ先に拍手を送ってくれたピアノの発表会。
ぬるくなった湯たんぽのお湯で一緒に顔を洗った冬の朝。
 あんなに愛され、当たり前のように受け入れてきた愛情なのに、ある日突然それを素直に受け取れなくなってしまう。そして、時にはその愛情を裏切り、悲しませたり、傷つけたり。
 それが自立ということの始まりなのかもしれません。
 貧しく慎ましい暮らしの中で母と二人、支え合いながら生きてきたヒロインが、自分の足で歩きだし、やがて人生の「極上の一滴」を求めて酒造りに賭ける青春の旅を、母親が子を育てることの苦しみ、喜びと重なるように描いていきたいと思います。
 何かを育てる思い、誰かをいたわる気持ち、生命を慈しむ心・・・・・・。
 そうした「母親的なもの」とは、実は今、男女の区別無く現代人がもっとも大切にしなくてはならないものではないでしょうか。
 灘では上がりのよい酒を「秋晴れ」の味、と呼ぶそうです。しゃんとあがった高い秋空のようなキレのよい「秋晴れ」のドラマ、どうぞご堪能下さい!