幸せいっぱいに育った王子が死んでしまい、王様は王子の像を町の真ん中に作りました。
その両目には青いサファイア、腰の剣には真っ赤なルビーがはめ込まれ、体は金色に輝いている美しい王子の像は町の人々の自慢でした。
そこにやって来た一羽のツバメが王子の足元に羽を休めると、雨も降っていないのに、水滴が落ちてきます。それは、像の王子が流した大粒の涙でした。
「どうして泣いているんですか」
とツバメがたずねると
「あそこに可愛そうな婦人がいる。病気の子供を助けようとしているが、川の水しか与えられるものが無くてとても悲しんでいる。どうか、この剣のルビーをあの婦人に届けてくれないか」と。
ツバメがルビーを届けると、今度は両目のサファイアを、貧しい劇作家と幼いマッチ売りの少女にと・・。
「そんなことをしたら、あなたは何も見えなくなってしまいます。」
でも、ツバメは王子の強い願いを聞き入れ、目の見えなくなった王子にいろいろな話を聞かせます。その度に王子は、自分の体を覆う純金をはがして持って行って欲しいと頼みました。
やがて冬になり、みすぼらしい姿になった王子の傍でツバメも弱ってきました。ツバメは最後の力をふりしぼって王子にキスをすると、その足元に落ちて死んでしまいます。
町の人たちは、王子の像がみすぼらしくなったのを見て、こんなものはおいて置けないと壊してしまいます。最後に、溶鉱炉で溶け残った王子の鉛の心臓は、死んだツバメと一緒にゴミ溜めに捨てられてしまいました。
しかし、天の神様は見ていました。
「町の中で最も貴いものを二つ持ってきなさい」と天使の一人に命じ、王子の心臓とツバメを天に引き上げるのでした。
~The Happy Prince~原作 オスカー・ワイルド(1888年作 イギリス)