たんば田園交響ホールは、ホロンピア‘88北摂・丹波の祭典の中核施設として、昭和63年4月に、「地域住民の文化芸術の高揚を促進し、併せて福祉の増進を図る。」ことを目的に、兵庫県によって設置されました。
当ホールは、音楽ホールとしての機能を最も重視した設計になっていますが、あらゆる用途に対応できる多目的ホールであり、丹波地域だけでなく、多くの方々に文化振興の殿堂として、新しい田園文化都市づくりの拠点、文化の発信地として活用されてきました。
ホールは兵庫県所有の施設であり、運営を篠山市が行ってきましたが、平成22年の兵庫県の新行革プランに基づき、大規模改修工事の終了後、平成23年4月1日、兵庫県から篠山市に移譲されました。
今後、名実ともに篠山市のホールとして、運営に関する基本的な考え方・運営方針、篠山市らしいホールのあり方等を定め、さらに効率的かつ効果的な運営を図るため、「篠山市立たんば田園交響ホール運営計画」を策定します。
(1)わが国における公立文化施設のあり方
わが国の公立文化施設の性格は、当初は講堂型の公会堂としてスタートしましたが、昭和20年代後半(1950年代)以降、集会・大会のための施設から文化芸術を上演する劇場型へと移行しました。さらに昭和30年代後半(1960年代)以降は、多様な演目の上演が可能な多目的ホールの建設が盛んとなりましたが、昭和50年代後半(1980年代)に入ってからは、大型多目的ホールに対する見直しを求める声が強くなり、新たな方向性を志向する動きが登場しました。
第一には、住民の高度で専門的な文化芸術の鑑賞ニーズが高まったことや、全国に類似した公立文化施設が多い中で、特色ある文化芸術拠点の整備の必要性が認識されたことなどから、音楽や劇場等の特定の文化芸術に特化した専用ホールを志向する動きが見られました。この動きは、複数の専用ホールを有する複合体型の公立文化施設として現在も続いています。第二には、住民の文化芸術活動を活性化させることを目的に、市民の文化芸術活動の基盤となる創造支援型施設が登場してきました。この志向は1990年代に入ってから際立ち、現在では公立文化施設の主流となってきています。
(2)たんば田園交響ホールの現状と課題
@ 交響ホールの現状
たんば田園交響ホールは、開館以来、文化芸術の鑑賞と文化施設の拠点として、市民が文化芸術に触れる機会の拡充や、文化芸術活動を行う団体の育成を図ってきました。質の高い音楽や文化芸術を実際に体感できる施設として、豊かな響きを生かした、クラシック主催公演の実施や、市民オペラやミュージカル等の住民参加型事業の運営を続けています。
また、市民の文化芸術活動の練習・創造・発表の場として、ホールの設備を充分に活かし、かつ利用しやすい施設としての環境づくりに努め、現在も多数の方に利用いただいています。
A 交響ホールの課題
ホールの運営スタイルの構築については、日々変化し続ける市民ニーズに対応しながら、篠山市にとってより良い方法を模索していかなければなりません。
地域文化の育成・創造活動の支援について考える上でも、公益性を損なうことなく、広く利用者へサービスを提供することが前提となります。
運営体制への客観的な評価基準の設定や手法は、専門家によるアドバイスを受けながら、確立に向けて進む必要があります。
また、市民が参加し協働する事業については、一過性のものではなく、持続的に発展していく仕組みを作ることがホールにとっての一つの命題となってきています。
情報ネットワークの構築や事業実施については、近隣のホールとも相互に連携を図り、情報を共有することでメリットを得ることが可能となります。しかし、ホールはそれぞれ運営母体や体制、情報管理の方法が異なっているため、連携のあり方や、基盤づくりなど、超えるべきハードルが多くあります。
企画運営への市民参加手法の研究については、交響ホールとしては平成23年度に初めて市民共同企画事業を展開しますが、他にも、地元商店街との連携など、今後も調査・研究を繰り返し、最善な事業のあり方を追及していくことは不可欠となります。
利用者にとって使いやすい運営方法や体制を構築するにあたっては、運営計画の定期的な見直しや、利用者の立場に立った観点からの改善、他ホールとの比較や分析を重ねて整備を進めることが求められます。
このように、多くの課題がある中にも、文化芸術に関しては年月をかけて築き、磨き上げるものという確信をもち、より良いホールに向けて一意専心の気概を持ち発展を続けていかなければなりません。
住民の夢が結実し誕生した、たんば田園交響ホールは、開館以来「文化芸術振興の拠点施設」として篠山市の文化芸術を支えてきました。文化芸術を支え、育むということは、いわば豊かな未来を創造していくということであり、地域社会において、公共のホールはそのことについて非常に大きな責任と義務を担っていると言っても過言ではありません。
たんば田園交響ホールは、今後の篠山市においても文化芸術の発展の礎となり、市民の文化芸術活動を支援し、文化力の向上を促進していくことを目指します。さらには、未来を支える子供たちへの文化芸術推進の拠点となることを目指します。
また、市外からの利用者にとっても、親しみやすく利用しやすい環境を提供することにより、篠山を中心とした広域での文化交流活動が可能となり、市民の文化芸術に対する意欲向上を促進し、それはやがて篠山で住むことの誇りと豊かな生活をもたらします。より多くの市民が、多種多様な文化芸術に触れることにより、観る喜びや、創造する喜びを享受し、市民が文化活動を通して生きがいを感じることができる「感動」「創造」「交流」を軸とした夢のある交響ホールを創り上げ、市内外に情報を発信していきます。
「市民協働による文化芸術の向上と夢ある文化事業の創造」の基本理念のもとに、以下の3つの基本方針を設定します。
基本方針1 「感動できる拠点」
文化芸術の鑑賞や発表の場として、市民みんなが“感動”できる拠点
優れた文化芸術を鑑賞する機会を提供すると同時に、文化活動の発表の場としての重要な役割を果たします。市民の文化芸術に対するあこがれや向上心を刺激し、活動の活性化を促し、市民の誰もが感動できる拠点を目指します。
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施策 1 文化芸術鑑賞機会の充実
市民が鑑賞したいと希望する公演と、質の高い舞台芸術のバランスを考慮しながら公演事業の実施を進めていきます。
・幅広いジャンルによる多彩な主催事業を実施します。
・次世代を担う子供たちのために、本物に触れ、感性を育めるよう、優れた文化芸術を鑑賞できる機会を提供します。
・親子そろって鑑賞し、感動できる機会を提供します。
・公演時には来場者へのアンケートを実施し、公演の感想や、鑑賞希望の公演など、情報収集に努め、新たな事業へ反映させます。
施策 2 文化芸術活動の支援
市民による文化芸術活動の発表の場所として、利用しやすい環境をつくり、利用者も来場者も感動できる劇場空間を提供します。
・利用者が満足できるように、ホールの装置や機材を効果的に使用し、多彩な舞台芸術に対応します。
・舞台利用について、専門的な知識を持たない利用者の方にも、イメージを形にして、要望に応対し夢を実現できるような環境をつくります。
・ホールの舞台使用の空いている時間を有効に利用して、楽屋やピアノの単独貸し出しを行うなど、利用者のニーズに添った形で使いやすく柔軟な対応し、利用促進につなげます。
・貸し館事業についても全国的にチケット販売ができるよう、民間企業と連携したサービスを実施します。
・来場者や出演者はもとより、機材や楽器にもやさしい環境(温・湿度等)の整備に努めます。
施策 3 啓発活動の推進
ホールで実施する主催事業や文化活動情報を発信します。
・交響ホールのホームページ上に、ホールの利用状況の掲載や友の会入会受付を行うなど、時代と共に進化する利用体系に則した環境づくりに努めます。
・ホームページに主催事業の実施状況を掲載し、席の空き状況確認やチケット予約受付など利便性の向上を図ります。
・交響ホール友の会については、特典の充実や積極的な広報による会員増加や公演の情報提供に努めます。
・市民との連携、協力により広報活動を展開し、より効果的な情報伝達を実施します。
・市外からも来場され、篠山の魅力を発見されるよう、篠山の産業(観光、農業など)、特産品との連携による相乗効果を高めていきます。
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基本方針 2 「創造できる拠点」
市民の参画と協働で、個性ある文化を“創造”できる拠点
ホールは、市民のための施設として、市民の参画と協働により、新しい文化創造の拠点となることを目指します。また、事業運営についても、市民と連携し文化創造活動の意欲を高め、市民参画による新しい可能性を探求します。
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施策 1 市民の参画と協働による文化事業の推進
市民の自立的、公益的な文化活動の育成と支援を展開し、より心豊かに生きることができる社会を目指します。
・市民が出演者やスタッフとして参画する市民ミュージカルを隔年で実施するなど、新しい興味や発見が沸き起こるようなプログラムを企画し、市民の知的好奇心を刺激するよう働きかけます。
・市民自らが企画提案し運営する「市民共同企画事業」を展開し、市民の力を活かしたホール運営を推進します。
・市民ニーズの把握に努め、新たな市民の参画と協働による事業を進めていきます。
・あらゆる舞台芸術への対応が可能である多目的ホールの特性を十分に活かせるよう、既存文化団体等へ利用についての提案を行うなど、創作・発表活動についての支援を行い、自発的な文化芸術の創造を促進します。
施策 2 ボランティアの育成と協働
交響ホールを支えるボランティアスタッフの充実と、地域の文化活動を推進できるリーダーの育成を図ります。
・市内外から舞台技術ボランティアスタッフの募集と育成を行い、市民参画による舞台運営を継続して行います。ボランティアスタッフが関わり、高度な知識・技術・経験を養い文化芸術水準のレベルアップを図り、市民と共に成長を続けていきます。
・ボランティアスタッフによる主催公演や、自主研修などに協力し、技術的、専門的な知識についてバックアップし、文化リーダーの育成を図ります。
・受付、案内についてもボランティアスタッフを募集・育成し、来場者が気持ちよく鑑賞を楽しむことができる空間を市民と一緒に創造します。
・公民館活動、社会教育との連携を図り、市民が、より質の高い文化芸術活動を行えるようにサポートします。
施策 3 文化創造のあり方を考えるホール
交響ホール運営委員会を設置するなど、よりよいホール運営を目指します。
・交響ホールの運営委員会を設置するなど、市民の意見を取り入れ、より市民に開かれたホール運営を目指します。
・運営委員には学識経験者の他に、一般公募により、広い視野で見た交響ホールのあり方や、市民のニーズに沿った形でサービスが提供できるように努めます。
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基本方針 3 「交流できる拠点」
文化芸術を通じて、人と人が集い“交流”できる拠点
文化活動において、人と人との交流は、相互に刺激しあうことによる相乗効果をもたらし、新たな創造活動への原動力となります。文化芸術活動への多様な参加機会の提供により、文化芸術に対する意識の向上や、人材の育成を促進し、活気みなぎる交流の拠点を目指します。 |
施策 1 多様な文化交流事業の推進
様々な文化交流事業を継続して行い、文化芸術活動による人材の育成に努めます。
・篠山の伝統芸能等の発表の場を提供し、活動情報を発信していきます。
・ホールの音響特性を生かした声楽コンクールを実施し、篠山の魅力を全国に発信するとともに文化交流を図ります。
・市民ミュージカルや市民オペラなど、交流を通して創造する機会を提供し、文化芸術への参加を促進します。
・既存の文化団体が、交流し、共に創造する事業を実施し、文化活動の振興を図ります。
施策 2 ホールの活用と整備
利用者にとって、利用しやすく親しみのあるホールを目指します。
・ユニバーサルデザインを積極的に取り入れ、誰もが使いやすく、快適な空間づくりを目指します。
・ホール施設の利用にあたり、機材の使用や専門的な内容については、技術スタッフがアドバイスを行うなど、利用しやすい環境づくりをします。
・市民が気軽に利用し体感できるよう、ロビーの交流空間としての活用やスタインウェイピアノの時間単位での貸し出しなど、文化活動の多様な参加機会を提供し、文化芸術に関心を持つ人材を育み、暮らしを豊かにすることを目指します。
・各種団体の自己研鑽や会議、市民の日常的な活動の場として、楽屋の機能を強化し単独利用の拡充を図るなど、市民の要望に応じた柔軟なサービスを展開し、利用者の裾野を広げ、より多くの文化活動をサポートします。
施策 3 地域に根ざしたホール
市内の商用施設や他施設と連携し、文化芸術の活性化を促進します。
・近隣ホールとの連携や情報交換を行うことで、効率的な運営をします。
・近隣の施設や商店等と連携し、チケット購入の利便性向上や効果的な広報活動を実施します。
・市内商用施設や社会奉仕団体などと協力し、ホール利用者を対象とした新たな特典やサービスなどを計画し、地域に浸透し、暮らしに根付くホールとして、文化芸術の活性化を図ります。
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